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東京都の規制条例は全てのマンガ誌に及ぶ

ついに東京都の規制条例が通っちゃたわけだけど、ツイッターとか見ていても、ほとんど誰もこれから青年誌他の普通のマンガ誌で起こるであろう表現規制 に関しては触れていないような気がする。

多くの人は、少年誌、少女誌などの子供が買うマンガ誌で法に触れるエロ表現ができなくなるが(これはこれで大きな問題だが)、青年誌や劇画誌や4コマ誌などこれまで大人が中心に買ってきたマンガ誌ではこれまで通りのレベルで表現は自由だと思っているんじゃないだろうか。

でも、ビッグコミックとかスピリッツとかヤングジャンプとかモーニングとかアフタヌーンとか漫画アクションとか漫画サンデーとかみこすり半劇場とか本当にあったゆかいな話誌だとかも、現状、書店やコンビニ等で18歳未満の子供も買えるわけだ。
都条例が規定しているゾーニングにおける成人指定のコーナーで売られているわけではないのだから。

石原都知事や猪瀬副知事は「表現の自由を規制しているわけではない。書きたいものを書けばいい。ゾーニングの問題だ。」(大意) というようなことを再三述べているが、実際にはあらゆる雑誌における表現の自由の規制につながってしまうと私は思う。

上にあげたような青年誌他のマンガ誌でも、規制に触れるような表現は実際問題、非常に描きにくくなる。
例えばもし、モーニング誌で誰かがそういう作品を描いて載って、それを当局に指摘されたら、モーニングは以後、成人指定のコーナーで売られることを選択するか、あるいは、その作品の載った号を回収し、次号からは絶対にそのような表現は全てのマンガ家に許さないようにしなければならない。

成人指定のコーナーのみで売られるようになったら、女性は非常に買いにくくなるだろう。
男性だって買いにくくなる。
ただでさえ売り上げが伸び悩んでいるというか減っているマンガ誌にとっては致命傷になりかねない。

また、それらの雑誌の中には、子供にも読んでもらいたい作品を描いているマンガ家がいるはずだ。
私などはデビュー作の『気分は形而上』からずっとそうだった。
大人だけに向けたマンガを描いているつもりは全くなかった。
『それはエノキダ!』とか『よしえサン』シリーズとか18歳未満の読者にも読んでもらいたくて描いてきた。
実際、そういう年齢の読者からファンレターをけっこういただいた。

自分自身、小学生時代から大量のマンガを読んできた。
高校時代にはビッグコミックも買って読んでいたし、昔の少年マガジンやサンデーには『光る風』とか『銭ゲバ』『ワル』など、今なら青年誌に載るようなマンガがたくさん載っていた。

今の18歳未満の読者達も、当然青年誌も読みたいはずだ。
青年誌を18禁にしてしまったら、マンガ界は少年〜大人含めて大事な読者を大量に失うことになるだろう。
したがって、青年誌も、少なくともエロ表現に関しては、少年誌と同じレベルにしなければいけない。

大人向け劇画誌だって成人指定になったら売り上げは減るだろうと思う。
4コマ誌もそうだ。実話系にはけっこう過激なエロ表現もある。
どっちも子供が買うことは想定していないだろうが、成人指定コーナーに置かれるのはつらいだろう。

ゾーニングは、ほとんど全ての出版社・編集者とマンガ家にとって、十二分に表現の自由の規制そのものなのだ。

猪瀬副知事はツイッターで、
みな勘違いしているが、性描写はおおいにけっこう。表現規制ではないから。
9:32 AM Dec 13th webから

と言い、さらに、
出版社は傑作なら喜んで原稿を受け取る。条例なんて、そのつぎの話。まずは傑作を書いてから心配すればよい。傑作であれば、条例なんてないも同然。つるんで騒いでもあとが虚しい。自分の生き残りを考えること。ライバル同士がつるむことに僕は理解できない。
10:47 AM Dec 13th webから

と言ったが、この人はつくづくマンガの現場について何も知らないのだなあとあきれた。
マンガの原作までしていた人なのに、ここまで無知だとは。

ともあれ、今回、ツイッターを始めとして、マンガ家や読者達が思いきり騒いだ ことはとても有意義だったと私は思う。

猪瀬副知事は、
12月7日と8日。都議会本会議でかなり突っ込んだ質疑応答あったが、傍聴席を見上げるとガラガラ。よくそれでいろんなことを言うねえ。
8:36 AM Dec 9th webから

などと批判者達の資格を問うようなことを言ったが、ツイッターというものを理解できていないのだと思う。
ツイッターみたいなツールは今回の場合、当事者達が、当事者を支持する大衆が、こぞって声をあげるために使うもの だ。
ツイッターに限らず、ネットは、と言ってもいいかもしれない。

これで、よっぽどとんでもない犯罪行為礼賛のエロ表現以外は容易に条例の規制を適用できなくなったと思う。
だから、出版社・編集者は無用な自主規制をしないでいただきたいし、マンガ家自身も一切たじろぐことなく、作品を面白くするためにありとあらゆる表現をこれまでと同じように試みていってほしい。

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