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『うああ哲学事典』全50話を電子書籍サイト「パブー」にアップ完了

『うああ哲学事典』41〜50話をパブーにアップ。
これで全50話をアップ完了した。

うああ哲学事典(41)中島義道
http://p.booklog.jp/book/9237
うああ哲学事典(42)トリスタン・ツァラ
http://p.booklog.jp/book/9238
うああ哲学事典(43)エリクソン
http://p.booklog.jp/book/9239
うああ哲学事典(44)ヘーゲル
http://p.booklog.jp/book/9246
うああ哲学事典(45)バタイユ
http://p.booklog.jp/book/9248
うああ哲学事典(46)バークリー
http://p.booklog.jp/book/9262
うああ哲学事典(47)ウィトゲンシュタイン
http://p.booklog.jp/book/9263
うああ哲学事典(48)シャノン
http://p.booklog.jp/book/9264
うああ哲学事典(49)新渡戸稲造
http://p.booklog.jp/book/9265
うああ哲学事典(50)マーティン・ガードナー
http://p.booklog.jp/book/9266

アップにあたって全部読み返したわけだけど、よくまあ、この密度で毎週毎週描けたもんだと思った。
絵もストーリーも超全力投球。
これをもう1年続けていたら死んでたんじゃないか。

1話製作するにあたって、ネームに使えるのは3日間。
ネタ帳には、過去に哲学書を読んだ際にメモしておいた「この思想の中のこの考え方をちょっと自分なりにひねって、日常や社会の在り方などにこういうふうにあてはめてみると面白いんじゃないか」的な発想が羅列してある。
その中からストーリーになりそうなものを探して必死に話を組み立てる。
テーマになる哲学書も当然読み返す。

ネームはパソコンのワープロソフトを使って文章だけのシナリオ形式。
きちんとページとコマ割りもシナリオで決める。
構図も詳細に文章で説明書きする。

それを4日目にラフな下描きにする。
描けたらすぐに担当編集者にFAX。

5日目は朝からアシさんを入れて背景の下描きを進めてもらう。
だいたい昼頃に担当から電話が来て、わかりにくいところなどを直す。

担当がテーマの哲学的考え方を全く理解できない回は大変だ。
必死に説明する。
口で説明しなくてもわかるようにネームを描いたつもりなのだが、伝わらないのだから説明するしかない。

ロールズの回の「正義」と「無知のヴェール」は担当には全くわからなかったようで、
「これ、ただのよくある道徳でしょう?哲学ですか?これ」と言われた。

でも、「弱い人の立場に立って思いやる」のと「無知のヴェール」は明らかに違うのだ。

なんとかネームが通ると、あとは必死に作画。
6日目の深夜に終わる時もあったが、たいていは7日目の朝方、ひどい時は昼までかかる時もあった。

他に月刊連載の『よしえサン日記』と中日新聞の『真剣10代さぼり場』もあったので、時間を捻出するのが大変だった。

あの2年間の平均睡眠時間は3時間を切っていたのではないか。
「○日目」とか書いているが、実際には太陽の動きと関係なく30時間起きて5時間寝るとか当たり前だったし。

だから、この『うああ哲学事典』には売れてほしかった。
自分のマンガ家としての切り札とも言える作品だった。

しかし、このマンガは、上記の担当編集者の反応の例でもわかるように、ものすごく好き嫌いの分かれる作品だった。

哲学独特のひねったものの見方が好きな人には評価してもらえる。
2003年の文化庁メディア芸術祭ではマンガ部門の審査委員会推薦作品に入ったりしている。
出した当時はアサヒ芸能やSPA!の書評欄にも採り上げられたし、近年でも『声に出して読みたい日本語』で有名な齋藤孝さんが朝日新聞のサイトで「同時代感で甦る古典への誘い」として『うああ哲学事典』にも触れて下さっている。

刊行してから3年ほどで絶版になってしまい、古本市場にもほとんど出てこないみたいで、「『うああ哲学事典』が入手できない、注文もできなかった」という内容のメールは数多くいただいた。

しかし、やたら文章が多く、マンガとしてすらすら読んで楽しめないので、受けつけない人のほうが多いのだろう。
モーニング誌でのアンケートは常に下位だったし、だから2年で打ち切りを食らってしまった。
担当に「あと4回で終わらせて下さい」と言われた時のショックは今でも忘れない。

とにかく、もう一度世に出すチャンスがほしかった。
今回、パブーさんで全編配信できて本当によかったと思う。
少しでも多くの人に読んでもらえたら幸せです。

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