ブックスキャン?何考えてんだ!
またまた悪質な著作権法無視の業者がネット上に現れた。
「BOOKSCAN」(ブックスキャン)というサイト。
本のスキャンを代行しますという業者のサイトだ。
「書籍を裁断しスキャナーで読み取り、PDF化するサービス」を今月19日から有料で提供するという。
そこの「著作権について」というページにこういう記載がある。
1・現行の法律のままですと、ご自分でスキャンするのはOKですが、第三者に依頼することはNGだそうです。
2・BOOKSCANへご依頼頂いたものは、著作権法に基づき、著作権保有者の許可があるものとして判断させて頂きます。許可がないものは、ご遠慮頂くか、ご自身でスキャンしてください。
なんだこれ、明らかに著作権法違反なのを知っていてやってるんじゃないか。
その後、こうも書いてある。
自分でスキャンするのは、OKだけど、業者に依頼するとNGというのは、今の時代にあっていないと思います。
私的複製の範囲拡大に関する法改正は、国会議員 ツイッター一覧などで働きかけお願い致します。
そういう主張はあってもいいだろう。
だが、それならそういう法改正ができてから開業してほしい。
スキャンを依頼してくる読者たちが、いちいち作者に問い合わせて許可を取るわけがない。
作者も、そんな業者経由のスキャンを許可する人がたくさんいるとはとても思えない。
なんてツラの皮の厚い業者だろう。
多分、ネット上の一般読者の多くはこれを支持するのだろう。
ウィニー騒動の時も、あんな明らかな犯罪用ソフトの作者を「包丁を作ったものが罰せられるのか?」というトンデモ理論で擁護する人間が相次いだ。
作者本人がネット上で「著作権の概念を崩壊させるために作る(大意)」と豪語していたにも関わらず。
どうにも近年、こういう「自由なネット時代」とやらをカンチガイした人が増えてきている気がする。
大新聞社を嫌い、大手出版社を嫌い、大企業を嫌い、「21世紀の黒船到来」とばかりにネットのメディアやそれに伴う個人の新興ビジネスを褒め称えるような人。
これじゃ、今あるコンテンツはたしかに自由に、みんなのものになるだろうけど、今後、職業作家は消えてしまうぞ。
作品に正当な対価が得られなくなり、商業作品は成り立たなくなり、誰も作家で食えなくなるじゃないか。
万人がネット上で作家となり、読者となる時代を望んでいる?
そうなると、作品は全てタダになるのだろう。
誰のどんな作品も全てタダ。
作っても1円も稼げないが、他人の作品に金を払う必要もない。
それはそれで成り立つのかもしれない。
それなりに面白い作品も生まれていくのかもしれない。
しかし、私は支持できない。
作家が作品作りだけに人生のほとんどの時間を費やすような、そんな作家の生き方はできなくなるだろうから。
鳩山総理みたいなよほどの金持ちの御曹司ならともかく、たいていの人は他の仕事で食い扶持を稼ぎながら作品作りの時間を捻出しなきゃいけない。
要は趣味の延長みたいなものしかできないわけだ。
無論、そういう面白さの世界もあっていい。
だから私はYouTubeやニコ動の世界を否定しない。
だが、そればかりじゃダメだろう。
作家で食っていくプロは絶対に必要だと思う。
お金をいただいて読んでもらう、観てもらう……これは作家の価値観としてモチベーションとして、とても大事だからだ。
他人の財布からお金を出させるのは本当に難しいことだ。
それを知っている作家とそうでない作家では、出来上がる作品は全然違ってくる。
どっちが優れている劣っているとは簡単に言えないが、プロを消してしまうのは人類が現代社会において生み出した財産を失うことだと私は思う。
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