マンガ家と〆切り
今週はずっと『よしえサン日記』の作画作業だった。
さっき(午後4時)上がってメールで送信したところ。
〆切りは金曜日だったのだが、金曜日早朝に起きた時点でまだペン入れすら始まっていなかった。
夕方の原稿送信予定時刻が迫った頃、ペン入れが3分の1くらいという状況だったので、担当さんにメールを入れる。
間に合わないのをお詫びして、深夜〜未明の送信になりそうだと連絡。
しかし、今回の原稿はほとんどのコマに人が3〜4人ずついたり、カニやザリガニやドジョウも大量にいたりして、ペン入れはなかなかはかどらない。
ようやく全ページにペンが入って、スキャナで取り込んでパソコン画面上に線画を表示できた時は、外が明るくなりかけていた。
首や肩に鈍痛が走る中、ドトウの速度で仕上げ作業を進めるが、登場生き物が多くてなかなか進まない。
今日(土曜日)の昼前になっていきなり猛烈な睡魔が襲ってきて、動悸が激しくなり、ちょっと不整脈っぽい感じの鼓動が混ざってきたので、1時間ほど仮眠を取ることに。
2時間寝ちゃって、起きてパソコンを見たら、担当さんからメールが。
「今日、製版所に入れるには4時までに送っていただく必要があります。」とのこと。
大いに焦りながら作業再開。
必死の思いでギリギリ間に合わせたのだった。
アシさんを使わないと1人マラソン状態になり、自分自身の作業スピード自体が遅くなるので、余裕を見て1日早く下描きに入ったのだが、絵の密度が予想を上回っていた。
〆切り日は(月刊誌なので)1ヵ月前には担当さんから指定される。
無論、その日に原稿を入れないと掲載されなくなってしまうデッドの〆切りではない。
それだと、遊びの全くないハンドルやブレーキの車を運転して大量のニトログリセリンを運ばされるようなもので、多くのマンガ家はプレッシャーで鬱病になって入院するだろう。
毎年50人くらいマンガ家の自殺者が出るに違いない。
しかし、最初に指定された〆切り日を雑誌の執筆陣全員が守ると、予定されていた理想の台割(作品や広告ページをどんな順番で掲載するかあらかじめ決めたもの)通りに雑誌ができるし、当然、編集部や製版所、印刷所などの人達がストレスなくスムーズに仕事ができる。
マンガ家にとっても、次の回のネタ出しに早く入れるし、人に迷惑をかけずに済むので精神的に安定し、心臓や胃腸の調子が良くなるので大いにメリットがある。
だが、最初の〆切りを破るマンガ家はほぼ確実に出る。何人も出る。
そうすると、編集者は台割を急きょ変更し、掲載順をパズルを解くように考え直さねばならない。
変更後も、誰が何時に確実に、というわけではないので、流動的に調整し、製版所や印刷所にも連絡しての連係プレイが必要になって、けっして簡単な作業ではない。
だから、最初の〆切りはけっしてテキトーなラインではなく、もしマンガ家全員が破ったらおそらく雑誌が出なくなってしまうし、4分の3以上は最初の〆切りを守らないと台割調整が不可能な、けっこうシビアな攻防ラインなのだ。
もちろん、編集者はこういうことを織り込み済みで毎回雑誌を作っているのであろうが、マンガ家までそれを織り込み済みで仕事をしたら、織り込み済みスパイラル現象に入ってしまい、〆切り日はどんどんデフレになる。(何言ってんの、おれ)
今回の私の原稿は、最悪、月曜日送信でも掲載には間に合ったと思う。
しかし、それは台割変更を強いるし、だいたい、せっかく土曜日にまで編集部に出てきてくれている担当さんに申し訳ない。
もし、今日の4時に間に合ってなかったら、仮眠を取ってしまったことを後悔して3日寝込むところだった。
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