テレビもマンガも全然終わってない
2ちゃんの実況スレが好きだ。
もはや常連となっている将棋板は、プロ棋戦のネット中継があれば、該当の実況スレにほとんど参加しているし(仕事がなくてヒマだからな)、最近はテレビ番組の実況スレにもよく行く。
世界陸上では楽しませてもらった。
いやいや、みんなノリのいいこと。
福島千里の大ファンである私は、彼女が画面に映ると、スレのみんなと一緒に、
「アホの子キターーー!!」
と書き叫んでいた。
一流スプリンターに対して「アホの子」ってメッチャ失礼だが、これは2ちゃねらー達の最大級の愛情表現。
最初、福島さんが陸上女子100・200m界に彗星のように現れた時、レース後のテレビインタビューで、ほとんど放送事故レベルと言っていいくらい、返事に間を開けた。
しかも、その間、彼女は「えへへへ」的なかわいい笑みを浮かべていて、視線もうつろだった。
それがまた、アホっぽくてとてもかわいかった。
後でわかったが、福島さんはちゃんとレース内容を的確に振り返り、分析もして、さらには自分のこれからの思いについて話すことのできる頭のいい人だ。
テレビに映され始めの頃からいきなりうまくしゃべれる人なんか、ほとんどいない。
そもそも、レースに合わせて神経を研ぎ澄ませ、体の準備をしてきて、渾身の力を振り絞って100mを走りきるわけで、ゴール直後には一種の放心状態になるに違いない。
男子100mの塚原みたいなカッコいいコメントを期待する方が無茶だ(彼は飛び抜けてすごいという意味ですよ)。
でも、まあたしかに、最初の福島千里は「アホの子」に見えたのだ。
みんなにそう見えちゃったんだからしょうがない。
実況スレでは彼女が描いた直筆サイン色紙(これがまた彼女そのものでかわいい)や、解像度の高いクローズアップ地デジキャプ画像もうpされたりしていて、私の知る限り、ここまで濃い応援空間は、かつてナゴヤドームで行われたドラゴンズVSホークスの日本シリーズでライト側外野席の応援団「酔竜会」に参加した時以来だ。
さて、実況板で盛り上がるのは世界陸上のような特別なイベントの時だけではない。
普通に、毎週のレギュラー番組でもそれなりに盛り上がっている。
こんな番組誰も観ないよ、実況スレは閑古鳥が鳴いてるんじゃないの?と思っていたような番組も、ちゃんと人が集まっていて安心する。
今、思い出せるままに、私がほぼ欠かさず(タイミングが合わない時は録画予約をして)観ている番組を列挙してみると、
青春リアル、ワンダー×ワンダー、NNNドキュメント、情熱大陸、仕事の流儀プロフェッショナル、スポーツ大陸、ゲットスポーツ、TVタックル、報道2001、サンデープロジェクト、朝まで生テレビ、ワイドスクランブル、スーパーニュース、イッポウ、NHKニュース7、クローズアップ現代、ニュースウオッチ9、報道ステーション、ニュースJAPAN、NHKスペシャル、SONGS、将棋の時間、NHK杯将棋トーナメント、囲碁将棋ジャーナル、将棋銀河戦、中学生日記、サイエンスZERO、トップランナー、時事放談、たかじんのそこまで言って委員会、ミヤネ屋、徹子の部屋、伊集院静のスポ研、タモリ倶楽部、ER救命救急室、日本のこれから、きょうの健康、名医にQ、ハートをつなごう、ためしてガッテン、ピタゴラスイッチ、パパサウルス、プロ野球中継、MLB中継、F1中継、大リーグ中継、英国BBCドキュメント……。
おおむね、仕事と同時のナガラ視聴だが、たけくまメモの竹熊さんのように「BGM代わりに流しているだけで、特には見てい」ないタイプではなく、面白いからついつい観(聞き)入ってしまい、ネタ出しや作画作業に集中できない時は録画にするというパターン。
そして、これらの番組の実況スレにはけっこうな人数が集まっているのだ。
こないだの竹熊さんとの議論において、竹熊さんは今のテレビ番組は「テレビを捨てても大丈夫」なくらい「質的低下」をしたとおっしゃったが、私は見解が違う。
たしかに自分が子供の頃のようにはテレビにのめり込めなくなったが、いまだにテレビは面白いのだ。
今、中年、熟年になって、「マンガが面白くない」「テレビが面白くない」などと言っている人は、要するに自分が歳を取って、自分の子供時代にも戻れず、今の大人世界にも溶け込めないだけではないのか。
そりゃ、50前後の人が、今の少年サンデーやマガジン、ジャンプ、今のテレビのアニメやバラエティ番組なんか面白いわけがない。
だって、ターゲットは子供たちだもん。
私は現在、高2、中2、小5の子供がいるからわかる。
今の少年マンガもテレビの娯楽番組も、今の子供たちには面白いのだ。
子供達は毎日のめり込んで読んで、観ている。
また、年齢で好みが変化していくのもつぶさにわかる。
そういう状況を客観視できない人がいるとすれば、それはその人がオタクだからだ。
オタクが文化の歴史的構造を自分本位に誤解してしまうカラクリは、こうだ。
・自分が子供の頃、自分の世代向けのアニメや娯楽番組で大いに楽しませてもらった。
・その世代が大人になっても、子供の頃の「面白さ自分基準」を維持し、大人基準に成長させられずにいる。そういう人たちを「オタク」という。
・今や、当時の視聴者だった同世代が、年齢を重ねて大人になり作り手側にもなっている。彼らも当然「オタク」
・彼らがオタク同志に向けて、いまだに自分たちが楽しみ合うための作品や企画をいくばくか提供し、同志たちは享受している。(ガンダムやエヴァンゲリオンなどがその典型)
・オタク達はそれこそがメイン(本物)だと思っている。
・その座が狭いので、「現代は本物が隅に追いやられ偽物が跋扈する時代だ」と勝手に思い込んで「面白くなくなった」と怒っている。
マンガやアニメの世界は元来、子供のものなんだから、すんなり「イナズマイレブン」や「メタルファイトベイブレード」とかに全ての座を明け渡せばいいじゃないか。
で、大人は「プロフェッショナル」や「NNNドキュメント」を観るのだ。
バラエティやお笑いだって、私が子供の頃にのめり込んでいたドリフやコント55号やゲバゲバ90分に、私の親は「そんなもんばかり観てるとバカになる」と言っていたのだ。
私は「はねとび」や「エンタの神様」などを観ている自分の子供達に同じことを言いそうになるが、こらえている。
時代によってメインターゲット層の笑いのツボも変わるのだ。
いや、オタクがいて全然いいんだけどね。
それもまた文化だし。
でも、「予言」はちょっとなあ……(笑)。
(いきなり「予言」の地平に行っちゃったもんで、つい皮肉っぽいエントリーを書いてしまった……。
「予言」でもいいんだけど、あれは「根拠を示してない」んじゃなくて、当初のシステム批判やシステム崩壊論とは全然次元の違う単なる「経済不況で出版界は終わる」論(予言)になってるし。
経済不況原因論なら、私が最初から言ってることじゃん。
竹熊さんの主張は、たとえ今後景気が大きく回復しても、紙の出版システムの構造的欠陥による崩壊はもはや止まらない、という論じゃなかったのか……。)
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