「吟」のこと
名古屋に「吟」という店がある。最近知ったが、正式名称は「美食倶楽部 吟」というらしい。
ここはもう15年以上前から、年に数回、主に編集さんとの打ち合わせの時に使わせていただいている。
一度行くと、次の打ち合わせの時にも「また『吟』でどうですか?」って感じで編集さんがリクエストしてくる。
大御所ならともかく、私程度のマンガ家の場合、打ち合わせの時は私の方が東京に出向くのが普通だと思う。
でも、「吟」に行きたくてわざわざ名古屋への出張打ち合わせってことで泊まりで来てくれたりする。
中日新聞の記者さんとの顔合わせ、打ち合わせなどでも何回か行った。
料金はちょっと高い。ここの料理とお酒を堪能したかったら最低1万円くらいは覚悟しなくちゃいけない。
でも、それ以上の価値がある。
メニューのメインは牛肉だ。これはもうすごいの一言。人間で言えば指紋にあたる「鼻紋」が捺してある血統書付きの飛び飛び級の和牛だ。血統書には父親が但馬牛の太郎、母親が花子、みたいに親の鼻紋まで捺してある。
こういう牛を1頭丸ごと買って捌いてもらい、内臓他の部位は別のお店に卸したりしてコストダウンをはかっているそうだ。
普通はこの手の最高級の牛肉は1万円では食べられない。多分、叶姉妹が食べてるようなランクの肉だと思う。
肉には見事なサシが入っていて、生でも食べられる。脂は舌の温度で溶けて旨味が広がる。軽く炭火であぶって、ワサビを載せて、醤油ベースのあっさりしたタレ(もしくは塩だけでもいい)をちょっとつけて食べると最高だ。もう、どんだけうまいか。
ある編集さんは「叙々苑の一番高級なとこのよりうまい」と言っていた。
ここのすごさは肉だけではない。魚介系の料理も超一級。漁師から直接買うので新鮮さは折り紙付き。それを、素材の味をそのまま活かした和食やイタリアンなどで食べさせてくれる。40歳過ぎてから肉をたくさん食べられなくなった私や私より年上の編集さんなどはこっちの料理が主に目当てだ。メニューはバラエティに富んでおり、私の場合、毎回マスターにお任せ。次は何が出てくるかわくわくして、あんまり打ち合わせが進まないが気にしない(笑)。最近はマスターが自分で農地に野菜も作り始めて、野菜の味を活かした料理も出る。
酒は一時期よりは日本酒の種類が減ったが、最近、「飛露喜」が定期的に入るようになったそうで、次に行く時が楽しみだ。タイミングが合えば「十四代」も飲める。焼酎もたくさんあって、「越の寒梅乙焼酎」とかもある。
「吟」は名古屋ではあんまり知られていないかもしれない。「穴場」と言うか「隠れ家」的な店なのかな。全国いろんな地域から人づてに聞いてやってくるお客さんもけっこういるみたいだ。名古屋のスタンダードである、濃い味ではないので、名古屋人に大流行りということにはならないようだが、あんまり流行って味が変わっちゃったり、打ち合わせの時に予約が取れないと困るので、このまま隠れ家でいてほしい。
私はといえば、これからも「吟」に行けるように、売れるマンガを描かなくちゃ(笑)。
美食倶楽部「吟」
愛知県名古屋市港区東海通3丁目6-1
052-653-1122
定休日毎週木曜
営業時間午後6時くらい〜
| 固定リンク | 0
「グルメ・クッキング」カテゴリの記事
- 甘味と香りバツグンの鶴岡産だだちゃ豆(2009.08.26)
- 「吟」のこと(2009.01.13)