『ゴキちゃん』のこと
今回は『ゴキちゃん』に関して少し書きます。(「時事4コマの難しさ」に関してはまた後日)
コミックボンボンから仕事の依頼を受けたのは2005年の暮れでした。12月に、以前モーニング編集部におられた編集さんが名古屋まで来て下さり、「何か描いてほしい」と言って下さいました。
ボンボンといえば、昔から小学館のコロコロコミックと並ぶ児童誌の代表みたいなマンガ誌です。「千載一遇のチャンスを得た!」と感じました。
実は私は5〜6年前から、少年誌か児童誌に連載を持てたらいいなあと考えていたのです。なぜかというと、自分の息子達に読んでもらいたかったから。
これまでも、掲載誌が出版社から全て送られてきますから、私が描いたものを子供たちは読んでいます。しかしそれはあくまで「おとうさんのマンガを読む」であり、「ワンピース」や「NARUTO」などを自分が面白いから読む、というのとは違います。
純粋に児童・少年が面白いと思うマンガをそういう年代のためのマンガ誌に連載し、それを息子達にのめり込んで読んでほしい、そういう願望が強くなっていたのです。
多分、私自身が小さい頃、学年誌や少年マガジン、サンデーなどにのめり込んでいたことも影響しているでしょう。父親というのは、自分の体験を息子になぞらせたい願望があると思います。ましてや、自分が作ったものでそれができるとなれば……。
ボンボンの編集さんに会う前から作品の構想はありました。モーニングの『気分は形而上』でデビュー間もない時期に描いていた「ゴキちゃん」か「けつちゃん」をメインにした連載をやってみたいと。
コロコロに『ムシキング』があり、そのパロディみたいな「害虫バトル」というアイデアが浮かんでいたので、それを打ち合わせの時に編集さんに話し、「面白そうですねえ」「1本、ネームを見せて下さい」という感じで話はスムーズに進みました。
初回のネームが編集部内でも評判が良かったみたいで、すんなり連載が決まり、2006年の4月から開始となりました。
連載が始まるとボンボンも毎月、家に送られてくるようになります。これまでは大人向けの雑誌しか送られてこなかったのが、急に自分たちのテリトリーのマンガ誌が家に届くようになり、それだけで子供たちは目をギラギラさせてました。
で、『ゴキちゃん』への反応はというと、私の期待以上でして、まさにむさぼるように読んでくれました。読んだらメシ食いながらその回の話をするわ、毎月ボンボンが来る時期になるとそわそわするわ、不在でボンボンを受け取れなかったりするとブーブー文句言うわ(分厚いので郵便受けに入らないのです)、純粋に子供のマンガとして楽しんでくれたのです。
特に下の2人(小3,小6)はこれまで自分の父親を「うちのことをマンガにしている人」(←「よしえサン」シリーズのこと)程度にしか思っていませんでしたが、『ゴキちゃん』が始まってからは「おとうさんはマンガ家」だと気づいたようです(笑)。
といっても、ボンボンの『ゴキちゃん』はベタベタのお子様向けマンガになっているわけではありません。『気分は形而上』時代は大人の夫婦に飼われているという設定だったのを、小学生の男の子がいる家で飼われている、に変えただけです。もちろん、小学生の視点は入っていますが、お母さんのキャラもかなり立っていて、いろんな害虫や妙な人も出てきますので、大人のマンガ好きの方にも十分楽しんでいただけると思います。
ただ、残念なことに、掲載誌のボンボンが今年で休刊となり、『ゴキちゃん』はちょうど2巻分になった7月で連載を中断することになってしまいました。2巻は今年の10月23日に発売される予定です。
『ゴキちゃん』はソートーに気合いが入っている作品なので、いずれ必ず別のところで連載を再開したいと思っています。今は、他の仕事の合間に新しいネームを構想しているところです。
(上に貼った画像は2巻に載る14回目4P目のネームです。)
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